アメリカ・ロサンゼルスの市街地では、デモ隊と警察との衝突が続いていました。
きっかけは、トランプ政権が推し進める移民の大規模摘発。最近は、とにかく数字が求められ、1日に2000人以上が拘束されることもしばしばでした。
移民に寛容なロサンゼルスは、“聖域都市”と呼ばれ、知り合い、親戚に移民がいる人がほとんどです。摘発を恐れた人々が、移民の収容施設の前などに集うことで、デモが拡大。一部が暴徒化しました。
トランプ大統領は8日、州兵2000人を派遣し、鎮圧に動き出しました。
アメリカ トランプ大統領
「いたるところに部隊を配備する。わが国で、こんな事態を許すつもりはない。連中は唾を吐いた。新しい動きだ。知ってのとおり唾だけではない。そういうときは、唾を吐かれたら殴り返す」
本来、州知事の指揮下にある州兵。連邦法で、緊急事態の場合は、大統領に権限が与えられますが、権限が行使されるのは、1965年以来、60年ぶりです。今回のデモが、連邦法で定めるような緊急事態かというと、そこまでではないというのが、大半の見方です。
デモ参加者
「やり過ぎだと思う。大半は、平和的に抗議しています」
デモ参加者
「州兵派遣は演出。政権の印象操作で、トランプを信じる人が分断を深めてしまっている」
それでも、トランプ大統領が州兵派遣に踏み切ったのは、カリフォルニア州知事が、民主党のニューサム氏だからでしょうか。
トランプ大統領にとって、いまも有権者の半数以上の支持を得る移民政策で強硬な姿勢を貫き、デモへの対応をめぐって「民主党が悪い」という印象をつけることで、コアな支持層や無党派層にアピールする狙いがあるとみられています。
カリフォルニア州・ニューサム知事
「これは大統領の行為ではなく、独裁者の行為だ。事態を意図的にあおっている。警官隊の不足が理由ではなく、見世物が欲しいからだ」
◆テレビ朝日元ロサンゼルス支局長・斉木文武外報デスクに聞きます。
(Q.州兵の派遣は、どれだけ異例なことなのでしょうか)
斉木文武外報デスク
「60年ぶりの事態ということで。今回、州知事やロサンゼルス市長がデモ鎮圧に州兵は必要ないと言っているのに大統領が派遣を強行したことにとても驚きました。州兵というのは、アメリカ独特の軍事組織で、普段は、州知事のもと、災害派遣や治安の維持などにあたっていて、州の出身者で構成されていて、州知事の指揮下にあります。今回、トランプ大統領は、強引に州知事の頭越しに命令して、連邦政府の指揮下に移してしまった。これは、法的には、いくつか可能なパターンがあります。外国の侵略や“反乱”のような緊急事態には可能とされています。今回も反乱ということで、命令を出したようなのですが、命令を出した土曜日の時点で、デモは1000人規模、多くても数千人規模で、暴徒化した人もわずかだということを考えると、果たして、これが内乱や反乱にあたるのだろうかというところが、どうしても疑問点として残ってしまうと思います」
(Q.州知事は「見世物だ」と批判していますが、トランプ大統領にはどのような思惑があるとみていますか)
斉木文武外報デスク
「トランプ政権になって、移民政策に力を入れているのですが、なかでも外国からの不法移民は劇的に減っていて、いまは、国内にいる不法移民をどうやって強制送還するかというところに力を入れています。そのなかで、時折、間違えて、本来、在留資格のある人を送還してしまうという問題も起きているのですが、過激な対策をとればとるほど、この移民政策というのは、支持が集まるという側面もあります。一方で、外交面では、ウクライナ戦争の仲介や関税政策など、なかなかトランプ政権にいいニュースがない。こういうなかで、今回、暴徒化する移民を見せつけることで、対立関係にある民主党の知事や市長が治安対策に弱腰だと印象付けることができます。『トランプ大統領にとっては、望んでいた対立だった』と指摘する論評もあります」
(Q.今後、さらに事態が悪化する可能性はありますか)
斉木文武外報デスク
「週末、ロサンゼルスの中心街は人出が少ないです。今回、官庁街でのデモには強行に出ず、放置して、治安当局もガス抜きをさせていたという側面もあると思います。ただ、月曜日になると、経済や社会を動かさないといけないので、ロサンゼルスが夜が明けると、排除に乗り出すのではないかと思います。トランプ政権は、デモの発端となった移民の取り締まりをこれからも続ける。毎日、やると宣言しています。そうすると移民社会のトランプ政権への不満が高まっていく可能性があり、対立の構図が『トランプ政権vs移民社会』『トランプ政権vsロス市民』が鮮明になっていくと、デモは、さらにエスカレートする可能性もなくはないかなと思います」
[テレ朝NEWS] news.tv-asahi.co.jp/
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